医療現場におけるデータ統合は、効率的な医療提供の鍵となっています。
第2回目は、異なる医療機器のデータを統合するという困難な課題に挑んだMEGTARプロジェクトの開発背景と、その革新的なアプローチについて解説します。
■ 医療機器データ統合の必要性
医療現場では、多種多様な医療機器が使用されています。
しかし、これらの機器は往々にしてメーカーごとに異なる通信規格を持ち、データの統合的な管理が困難でした。
このデータの非統一性は、以下のような問題を引き起こしています。
情報の断片化
医療従事者の業務効率低下
患者情報の包括的な把握の困難さ
■ 開発の出発点
MEGTARプロジェクトは、異なるメーカーの医療機器データを一つのアプリケーションで統合し、患者別に一覧表示したいという明確なニーズから始まりました。
しかし、プロジェクトが開始してすぐ、解決が難しい2つの課題に直面することとなりました。
医療機器メーカー別に異なるデータ取得のための通信規格
通信機能を備えていないため、データ取得が困難な医療機器の存在
■ 革新的なアプローチ - 画像の活用
従来の通信によるデータ取得方法では限界があると判断したチームは、全く異なるアプローチを模索しました。
その際、着想を得たのが、駐車場に設置されていたナンバープレート読取システムです。
画像からOCR(光学文字認識)技術を用いて情報を抽出するという方法は、古くからある情報抽出方法です。近年のAI技術によって認識精度もかなり向上していますので、試してみる価値は十分にありました。
しかし、何度も実験した結果、OCR技術は環境要因に左右される場合が多く、再現性のある高い認識精度を達成することは困難でした。
■ MEGTARの基本方針
これらの課題を踏まえ、MEGTARは以下の3つの基本方針を策定しました。
データは「医療従事者の稼働状況確認補助」として利用する
医療従事者が画像で確認し、対処の必要性を判断する
必要と判断したデータのみをカルテに転記し、正式な医療記録とする
テキストデータで情報を統合するのではなく、画像のまま情報を統合するというわけです。
■ メリットとデメリット
この方針には、明確なメリットがあります:
患者の病状が安定している場合、手間をかけずに状態を把握できる
医療機器に問題が発生した際、画面をいつでも参照できる
医療従事者の判断を最終的な決定としているため、システムへの過度の依存を防げる
■ 医療情報システムにおける規制対応
医療情報システムは、医療行為の判断に使用する場合、医療機器認証が必要になることがあります。しかし、MEGTARの運用方法では、医療機器認証を受ける必要がないことが確認されています。
■ 技術的な革新性
MEGTARの最大の特徴は、以下の点にあります。
特定メーカーや特定機種に依存しない
通常のパソコンで情報閲覧が可能
追加の特別な工事不要
低コストでの導入が可能
■ 今後の展望
このアプローチは、特に以下のような現場で大きな可能性を秘めていると考えています。
一般病床
リソースが限られた医療機関
多様な医療機器を使用する環境
次回の記事では、MEGTARの一般病床での具体的な適用方法と、その優位性について解説します。
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